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チタンクッカーで美味しいご飯を炊く方法|完全版

キャンプ道具野外調理
この記事は約9分で読めます。

前回はsnow peakのチタンパーソナルクッカーを紹介しました。
軽量でフタ(兼プライパン)も合わせて4つの調理器具がコンパクトに収められるので、アウトドアで充実したメニューを楽しみたい人(私のことですけど笑)にお勧めのクッカーです。
ただ、チタンの決定的な欠点「熱伝導率の低さ」ゆえに炊飯はアルミに比べるとかなり難しいです。
「チタンクッカーでご飯を炊くのは不可能」と断言している人もいるし、少数だけど「チタンでも普通にご飯が炊けますよ」という人もいる。

どちら派も詳細が書かれていないので、どっちを信用したら良いのかわからない。
この際、自分で試してみるしかないな、これは!

チタンクッカーの炊飯テスト

今回は「チタンクッカーで美味しいご飯を炊く方法」を検証してみたいと思います。

炊飯の時の適水量は?

まず最初にアルミクッカーで炊飯をして、それを基準にテストしますがその前に、炊飯の時の適水量について考えます。

 
写真1枚目は普段ウチで使っている電子炊飯器。
米1合を研いで入れて、適水量の目印まで水を入れてみます。入れた水の量は200cc。
これでいつも美味しいご飯が炊けてます。米1合(180cc)に対して200ccが基準らしい。あくまでも、電気炊飯器の場合の話だけど。
では、アルミパーソナルクッカーの大鍋に米1合を入れて水200ccを入れてみます。

昔から野外調理で炊飯する時は「米に軽く人差し指を当てて第一関節まで水を入れる」と言われてますね。
写真2枚目を見ての通り、200ccだと第一関節の半分に満たないくらい。
私は手が大きい方なのでそのせいもあるかもしれませんが、いつもクッカーでご飯を炊く時はもっと多めにしてます。
この指差し水量測定法は、個人の指の長さの違いもあるし、クッカーの大きさによっても米の上どのくらいまでの水位になるのか変わってくるので、一度自分のクッカーで適水量を入れた時に指のどの辺りまでくるか計っておくと万全ですね。

一応、米一合に対する最適な水の量は以下の通りらしい。

  • 通常米の場合200cc、無洗米の場合220〜230cc

私はいつも実家栽培の米を標準精米したものを使ってますが、クッカーで野外炊飯する時は多少吹きこぼれることもあって、最低220ccは必要だと思います。今回も220ccで炊いてみます。

簡単に美味しいご飯が炊けるアルミクッカー。

 
ストーブに関しては、炊飯により向いているのは炎が横に広がるマイクロマックスULですがアルミクッカーならMUKAストーブでも問題ありません。
点火してパーソナルクッカーを載せ、重石代わりに水を入れた小鍋を載せます。

 
沸騰するまでは強火で、吹きこぼれたらすぐに極弱火にします。MUKAストーブでも風さえなければかなり弱火にできます。風がある時は風防が必要です。
あとはこのまま約15分、水がなくなってパチパチ音がして、ちょっと香ばしい匂いがし始めたらすぐに鍋を降ろして15分蒸らしたら炊きあがり。

 
特に難しいことはなく、いつも通り美味しいご飯が炊けました!

1. チタンパーソナルクッカー+バーナーパッドで炊く。

 
ユニフレーム バーナーパッド M楽天で見るアマゾンで見る

  • サイズ:約150×150mm
  • 材質:枠 / ステンレス鋼 メッシュ / 特殊耐熱鋼 FCHW2
  • 重量:約65g

S、M、Lと3つのサイズがあります。
私はφ148mmのパーソナルクッカー大鍋のサイズにピッタリのMを選択。

 
パッケージに書かれている通り、チタンやステンレスクッカーの焦げ付きを押さえるための網です。不安定な五徳に載せてクッカーを安定させる役目も果たします。
裏面の注意書きが重要。
・最大火力で使用しないこと(弱火で使うこと)。
・器具全体を風除けなどで覆って使用すると、輻射熱で点火器などを損傷する場合がある。

 
炊飯に向いているマイクロマックスULに点火して、バーナーパッドを載せます。しばらくすると網が赤く焼けてきます。ガス缶に手を当ててみると熱くなってます。鍋を載せるとさらに熱くなりそうで、ちょっと不安を感じる。
このパッドを使う場合は基本的にセパレートタイプのストーブの方が良いと思う。

 
炊き方はアルミと同じ方法で。
水を入れた小鍋を重石にして沸騰させます。途中鍋の中をチラ見。うーん、ちょっと沸騰具合にムラがあるかなぁ。
吹きこぼれたら極弱火にして15分。炊きあがり目安はやはりパチパチ音と香ばしい匂いで判断。


あとは蓋をしたまま15分蒸らしたらできあがり。

 
それなりに熱ムラは改善されてはいますが、端の方(赤矢印辺り)に芯のある米が残ってます。
まぁ、食べられる範囲内だけど、バーナーパッドを使ってもアルミのように手間いらずという訳にはいかないようです。
最初に沸騰するまで、蓋をしないでかき混ぜれば恐らく大丈夫でしょう。

2. ATSチタンクッカーTYPE-2M で炊く。

 
ATSチタンクッカーについての詳細はこちらをご覧下さい。
このクッカーは底面にアルミを蒸着させて、チタンの熱伝導率が低いという欠点を補った製品です。この製品なら上記バーナーパッドは不要です。
写真2枚目、マイクロマックスULの炎。鍋底一杯に広がって、炊飯に向いていることがわかりますね。


鍋の中をチラ見してみると、チタンパーソナルクッカー+バーナーパッドの時よりも全体が沸騰していてイイ感じ。さすがATS加工。
こちらも同様の炊き方で仕上げます。

 
炊きあがり。
大体うまく炊けてるけど、やはり周辺部がちょっと怪しい。底面の熱伝導率の低さは解消されてるけど、鍋側面の熱の伝わり方が悪いから、アルミのようにはいかないんでしょう。
こちらも、沸騰するまで蓋を開けてかき混ぜておけば完璧に炊きあがるはず。

「チタンパーソナルクッカー+バーナーパッド」よりはこちらのATSチタンクッカーの方がうまく炊けています。鍋底全体にアルミを吹き付けてあるから当然の結果だと思います。

3. チタンパーソナルクッカー+バーナーパッド+ぐるぐる作戦で炊く。

パーナーパッドを使った場合も、ATSチタンクッカーを使った場合も、熱ムラをなくす一手間を加えればうまく炊けるはず。
テストで芯のあるご飯を食べるの飽きたよ〜もう(笑)
この辺でちゃんとしたご飯を食べたい。

 
熱源はMUKAストーブに替えます。もちろんマイクロマックスULの方が炊飯に向いているんですが、炊飯向きじゃない炎(炎が横に広がらないタイプ)でうまく炊ければ、マイクロマックスはなら余裕なので、難しい方でテスト。
点火して鍋を載せて、下に手をやるとはやりかなり輻射熱がありますね。

 
ここからが、名付けて『ぐるぐる作戦』です。
蓋を開けたまま沸騰するまでぐるぐるとかき混ぜるんです。これにより鍋の中の熱ムラがなくなります。いい感じに鍋の中の米が踊っています。
後は蓋をして極弱火で15分なんですが、少しずつ鍋を置く位置をずらしながら鍋底全体に火が当たるようにします。バーナーパッドがあると、鍋位置をずらしても安定していてうまくいきます。

 
これは最高の炊きあがりです!
『チタンパーソナルクッカー+バーナーパッド』『ATSチタンクッカー』とも少し手を加えてこの『ぐるぐる作戦』を実行すれば本当に美味しいご飯が炊けます。

MUKAストーブでバーナーパッドは使わない方が良い。

そう言えばMUKAストーブの記事を書いた時にレアケースとして紹介した事故はバーナーに網状の物を載せて使っていたことによりOリングが劣化したのが原因じゃなかったっけ。

MUKAストーブでバーナーパッドを使うのは控えた方が良さそう。

4. チタンパーソナルクッカー+ぐるぐる作戦で炊く。

 
熱源をMUKAストーブにしているので、炊飯が一番難しい組み合わせです。
この組み合わせのどこが難しいかというと、チタンパーソナルクッカーの熱伝導率の低さに加えて、MUKAストーブの直噴型の炎(横に広がらないで上に炎が上がるタイプ)が熱ムラを助長させ焦げ付きやすいからです。
熱ムラを解消するために、蓋をせず沸騰するまで箸でぐるぐるかき混ぜます。
かき混ぜていると白く濁ってきますが、問題ありません。

 
沸騰したら、蓋をして重石(水を入れた小鍋)を載せます。

 
吹きこぼれたらすぐに鍋を持ち上げて炎から5cmくらい離し、底面に均一に火が当たるように鍋をぐるぐる回します。
この時に火は弱火にせず、強火のままです。
風向きによっては熱いので軍手をした方が良いです。水が少なくなってきたら重石を外しても大丈夫です。

 
15分たってチラ見したら、まだ水分が多そうだったので(この組み合わせは焦げ付きやすそうだったので最初に水を多めにしておいた)、少しストーブに近づけて熱しました。
そしたら、いつもより強い焦げ臭が・・・

 
これがいけなかった。底が焦げちゃいました(>_<)
水分規定量で、最後までストーブから離した状態にしとかなきゃいけなかった。
ご飯はこの後蒸らしてなんとか食べられましたが、チタンクッカーの底の焦げ、これを落とすのに苦労しました(それについての詳細はこちら)。

チタンパーソナルクッカーとMUKAストーブの組み合わせはやはりシビアですね。
でも、
(1)沸騰するまで蓋を開けたままかき混ぜる。
(2)蓋をして吹きこぼれたら、強火のまま鍋を5cmくらい持ち上げ底に均一に火が当たるようにぐるぐると回す。

『ぐるぐる作戦』と名付けたこの2つをしっかり実践すれば、チタンクッカーでも美味しいご飯が炊けます。
ただし、ちょっと手が疲れるし、ご飯を炊いている間は目を離せないので他の作業はできない。さらに(2)のぐるぐるは、ストーブやクッカーによって勘に頼らなければいけない部分があり、言わば職人技的な要素があるんですよね。

チタンクッカーで美味しいご飯を炊く方法 まとめ

実際に野外でうまく炊けた時の写真を使ってチタンクッカーで美味しいご飯を炊く方法をまとめます。

(1)米は研いだら、できれば1時間以上水に浸けておきます(無洗米も水に浸ける)。
 ※これにより芯のないご飯が炊きやすいです。

(2)水の量は米1合に対して220〜230cc。

 
(3)マイクロマックスULのように炎が横に広がるバーナーを使う。
※炎が横に広がるタイプの他のおすすめバーナーについてはこちらをご覧下さい。

(4)沸騰するまでは強火で蓋を開けたままかき混ぜる。

 
(5)沸騰したら蓋をして重石を乗せて、強火のまま鍋をバーナーから5cmくらい持ち上げ、鍋底全体に火を当てるために、鍋を浮かせたままぐるぐると回す。

 
(6)15分くらいを目安に、パチパチ音と香ばしい匂いがしてきたら、火からおろし15分蒸らす。※写真1枚目は蒸らす前の写真なので少し柔らかく炊きあがっているように見えますが。

これで美味しいご飯のできあがり!
この時は親子丼作ったんだった。あれは美味かったなぁー(^_^)
親子丼ランチの詳細はこちら

炒め物も焦げ付きやすいので、同様にクッカーをバーナーから少し離してフライパンの底全体を熱するようにぐるぐる回しながら炒めると良いです。

バーナーパッドやATSチタンクッカーにもぐるぐる作戦を併用しよう。

上記のATSチタンクッカーバーナーパッドはチタンクッカーの焦げ付きやすさをある程度改善してくれますが、アルミクッカーのようにはいきません。
このぐるぐる作戦を少し併用するだけで完璧に炊けるでしょう。
炊飯は電気炊飯器も含めて、とにかく「米全体が鍋の中で踊ること」ここが重要ですね。それがわかっていれば、自ずと対策はわかりますね。

チタンクッカーで美味しいご飯を炊くのは多少手間や技術は必要ですが、無理なことではありません。ただし、ちょっとメンドクサイし技術も必要なので、それをわかった上で使う人にしかお勧めはしません。

汁物では金属臭(金属味)が気になるアルミクッカーですが、ご飯の場合は全く気にならないので、炊飯はアルミクッカーに任せる方が良いと思います。
その辺りも含めて、次回はメニューやシーンに合わせて私のクッカー使い分けについて書きたいと思います。

・・・つづく

 

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コメント

  1. いやいや、これは『完全版』と謳うだけのことはある、そんな濃い内容ですね。^^
    ボクは家で炊いたご飯をジップロックに詰めて持ち出して湯煎して温めていましたが、普通に炊けば一からご飯を炊き上げちゃう方が早いかもしれません。
    手を抜かず、努力しよう・・・反省。

    • kuniさん、こんばんは。
      アルミクッカーでラーメンを食べた時に感じた金属味が気になったところから始まり、ずいぶんと深みにはまってしまいました(笑)
      炊いたご飯を湯煎するよりは、普通に炊いた方がむしろ簡単で美味しいかもしれませんね。状況に応じて試してみて下さい(^_^)

  2. こんばんは!ちょっと凄すぎですね!いつもながらの探究心、頭が下がります。
    私もご飯炊きのときは、熱がクッカーの底面を全体的に温めるため、バーナーヘッドが大きいプリムスのP-173を使用してます。
    今後の道具ネタ、期待してます。もちろん、釣りネタも楽しく拝見させていただいてますよ!

    • GⅡスプーンさん、こんばんは。
      探求心というか、気になり出すといろいろ調べてみたくなる性格なんですよね。大体がメンドクサイことになるので厄介です(笑)
      プリムスP-173は炎が横に広がって炊飯に向いているガスストーブですね。
      自分で使っているものについては、今後も紹介していきたいと思います。
      釣りブログなのに、どんどん脇道に逸れそうですが(^_^;)

  3. チタンでご飯は難しそうですね^_^;自分には無理そうです。バーナーパット いいですね。私は、餅焼き網? 網と金属製の皿みたいなのがセットになったやつを使ってます。バーナー熱に耐えられなくて歪んできました。

    • Kさん、こんばんは。
      今回いろいろやってみて、チタンクッカーでも工夫すれば美味しいご飯が炊けることはわかりましたが、基本的にはアルミクッカーでの炊飯をお勧めしたいですね。
      バーナーパッドは確かに熱を広げる効果はありました。
      餅焼き網のようなものがあれば、お手軽に焼き物ができていいですね。餅そのものも、野外では重宝する食材ですよね(^_^)

  4. こんばんは。
    これだけ試験を積み重ねるとは驚きです。
    自分もかなり凝り性で、実証的ですが、アウトドア炊飯にこれだけの拘りと実験するズクはありません。
    立派です。

    • マンボウさん、こんばんは。
      やり出すといろんな疑問が湧いてきて、それを確認しないと気が済まなくなっちゃうんですよね。厄介な性格です(笑)
      部分的に芯のあるご飯を何度も食べるハメになりました。
      子どもの頃から「ズクがあるねぇ」とあきれ半分でよく言われていました。そのズクのおかげで、答えを出すまで妙に遠回りしちゃうことも結構あります(^_^;)