捕れる場所は限定的でも質は良い|2023年12月〜2024年2月
昨年12月中頃から今冬もざざ虫を捕っています。
ざざ虫漁については毎冬書いていますが、「ざざ虫」って何? と思われた方はまずこちらをお読みください。
これも毎回書いていますが、虫が嫌いな人は見ない方が良いと思います(笑)
子どもの頃はトンボとかカブトムシとか捕った経験がある人は結構いると思いますが、大人になるとなぜか虫が苦手という人の割合が増えますよね。
大人になっても虫が好きっていう人はかなり少数派だと思います。虫の中でもざざ虫の主役ヒゲナガカワトビケラは、そもそも魚釣りでもしない限りは見たことすらないかもしれません。
冷たい水に浸かり、せっせと川虫捕り。
今年はなんだか知らないけど、伊那市内の天竜川は何ヶ所も大きく川底を掘り返してしまったので、ざざ虫はほとんど期待できない状態。
事前調査で比較的上流部に目星を付けておいたので、その辺りでやってみます。
釣りの餌にするくらいなら川のどこでも捕れますが、kg単位で捕るにはそれなりの条件が揃っていないと無理です。
まずは、水深と水速。水深20cmくらいの浅瀬で流れが淀まない場所が良いです。
それから川底の石の大きさと苔(藻)の付き具合。ヒゲナガカワトビケラは主に石についた藻を食べているので、石苔の付き具合はとても重要です。浅瀬でも苔が全くついていない場所にはざざ虫はほとんどいません。
自家製の四つ手網を持って、川底の石を掘り返しガサガサ。
読み通りここは虫の密度が高くて調子良いです。
ざざ虫漁の主役、ヒゲナガカワトビケラの幼虫。
12月中は気温が高い日が多かったですが、水温はかなり低く、虫もサイズは良好。
水が冷たい方が、虫は脂肪分を蓄えようとするのか、サイズは良いです。
これはヒゲナガカワトビケラの蛹。春先になると蛹が多くなります。
珍しく成虫もいました。これがヒゲナガカワトビケラの成虫です。
フライフィッシングでこれを模したのがエルクヘアカディスですが、私が作っているエルクヘアカディスは羽が短く、この成虫とは似ても似つかない感じ(笑)
他には数は少ないけれどカワゲラとヘビトンボもざざ虫として捕ります。
たくさん捕れたざざ虫。ヒゲナガカワトビケラの幼虫は緑がかった黒っぽい色をしています。
捕れたざざ虫は佃煮の原料に。
茹でると赤紫色になります。良い状態のものほど鮮やかな色になり、黒いままのものは潰れてしまった虫です。
普段は佃煮業者に卸してますが、実家周辺で欲しいという人には佃煮にしてお裾分け。
下茹でしたざざ虫を大鍋で佃煮に。
佃煮は、小魚や小エビ、それに昆布なんかがメジャーですよね。佃煮の作り方は比較的単純で、基本は醬油と砂糖で煮詰めるだけです。
日本酒やみりんを入れたり、水飴で照りを出したり、単純な中にも細かなコツによって仕上がりは変わってくるので、そこが奥深いんですが。
仕上がった佃煮。
私はすりおろし生姜を入れて少し辛目に仕上げることが多いですが、今回は少し甘めの正統派佃煮といった仕上がりに。
全国でも有数の昆虫食文化のある、信州伊那谷に住む。
長野県の伊那谷(上伊那地方)は全国でも有数の昆虫食文化のある地域なので、私が子どもの頃はシーズンになると蜂の子やイナゴを食べるのはそれほど珍しいことではありませんでした。
ざざ虫や蚕の蛹となると、自分で捕るというわけにはいかず(実際にはざざ虫は大がかりな道具を使わなくても捕れるんですが)、買って食べることになります。
蚕の蛹はお手頃ですが、ざざ虫は高価なので何かの機会に一、二度食べたことがある程度でした。
虫の中で一番美味いのはどれ?
そんなわけで伊那谷の四大昆虫食、蜂の子、イナゴ、ざざ虫、蚕の蛹。
全部食べたことがありますが、見た目はともかく純粋に味覚のみで判断すると、イナゴが断然美味いです。佃煮にするとカリッと香ばしく仕上がり、味わいはエビの佃煮のよう。
続いては蜂の子。炒めて醬油をかけて食べたり、薄味の佃煮にしたり、蜂の子ご飯にもできます。蜂の子にはまるでバターのような脂肪がたっぷり含まれているので、甘みがあって美味しいです。
三番目がざざ虫か蚕の蛹かってことになりますが、蚕の蛹は見た目的に(蛹そのものというか、幼虫や成虫を想像して)一番苦手です。味は少し苦みを感じるような香ばしさがあり、良く言えば虫らしい味なのかもしれません。
ざざ虫はこの四種の中では唯一水生昆虫。その主役ヒゲナガカワトビケラは主に石苔や木の葉の欠片など流下する有機物を主食としているので、泥臭さというか天竜川の石苔の味がします。佃煮にするとほとんど醬油と砂糖の味になりますが、ほんのり感じる天竜川の風味(石苔の味)こそがざざ虫の味だと思います。
数は少ないですが、カワゲラもざざ虫に入っています。こちらは特に癖がなく小エビのような味わいです。
それから、ひときわ目を引く大きなヘビトンボ。地元では「マゴタロウ」と呼ばれこれだけを瓶に詰めて、「ザザムシ」とは別に売られています。こちらはしっかりとした噛み応えがあり、イナゴのような味わいです。
カワゲラやヘビトンボについても上記関連記事に詳細書いていますので、ご覧下さい。
興味ある方は伊那谷を訪れた際に、ぜひお土産に買ってみてください。それはたぶん私が天竜川で捕ったざざ虫です。
コメント
冬の恒例行事ですね。^^
捕り方とか、食べ方とか、徐々に伝承されなくなってくると廃れてしまうことになるでしょうね。
中々、
自分で採って食べる人なんて、どんどん減っているでしょうし。
kuniさん、こんばんは。
そうですね、私の中では冬の恒例行事です(笑)
私を除いては、今現在ざざ虫漁をやっているのは75歳以上のお爺さんたちなので心配していましたが、なんと今年は私より若い人が二人ざざ虫漁の許可を取ったそうです。
以前にもそういう人がいましたが断念したそうで、今回はどうなりますか。
毎年恒例ですね。
川きれいですね。
nanaさん、こんばんは。
そうですね、ざざ虫漁は私の冬のメインイベントです(笑)
冬の天竜川の水は本当に綺麗なんですよね。夏場の天竜川しか知らない人には信じられないほどに。
おはようございます。
ザザムシは伊那谷だけの食文化でしょうね、木曽川は知りませんが私の所の奈良井川ではザザムシと呼ぶ川虫はオニチョロの事でした、もちろん食べる文化は無かったですね、ザザムシとは一種類だけだと思っていましたがいろいろの総称なんですね、私の方に近い横川にも居ますか?
kitaさん、こんばんは。
昆虫食文化は日本各地にあってイナゴなんかは割と広い範囲で食べられていると思いますが、ざざ虫は伊那谷だけですね。
実は上伊那のざざ虫も昔はオニチョロがメインだったんですよ。昔から、オニチョロとクロカワ虫とヘビトンボの三種の総称がざざ虫でしたが、オニチョロは減ってクロカワ虫が増えたのでいつからかクロカワ虫がざざ虫の主役になって今ではクロカワ虫=ざざ虫と言っても良いかもしれません。
横川川にもざざ虫はいますよ。天竜川に近い下流部の方がたくさんいます。
おはようございます
ザザ虫漁ですか、寒風の中で水に入り大変な作業ですね。
それに、ゴミとの分別も大変でしょう。
そんな地域の伝統的食文化を繋いでいくザザ虫漁。
風邪罹患せぬ様にお気を付けください。
マンボウさん、こんばんは。
確かに冬の水は冷たいですが、川の水は最低でも0℃なので、実は川に入っている時はそれほど寒さを感じません。岸に上がって虫の選別などしている時に風があると恐ろしく寒いですが(笑)
そうなんです、ただ捕るだけならそれほど難しくないですが、捕った後の選別が大変です。虫が下へ下へ潜っていく性質を利用して、網を使った自動選別をしていますが、最後は手動です。
ありがとうございます、風邪を引かないように完全防備でもう少しがんばってみます。