炎天下の尺イワナ|天竜川水系イタチ谷(2日目)
※イタチ谷とは私が勝手に付けた名前で実在する地名ではありません。
昨夜は咳き込みながら就寝しましたが、さすがに疲れていたのかぐっすり眠り、周囲がうっすら明るくなってきた頃に目覚めました。喉の調子も悪くなさそうです。
小さな焚き火から始まる暑い一日
慌てなくてもこんな時間にここまでやってくる人はいないから、しばらく寝袋から抜け出せないまま横になっていると、急速に明るくなってきたので気合いを入れて起き上がります。
うーん、と伸びをして朝食の準備をします。
昨日集めた薪はほぼ使い果たしてしまったので、小枝を集めます。
ソロストーブならほんの少しの小枝があれば、調理可能です。
調理と言ったってチタンパーソナルクッカーでお湯を沸かすだけ(笑)
昨晩のご飯の残りをおにぎりにしておきました。それとインスタントの味噌汁。
それから、昨日の道すがら採ってきたミズをめんつゆ漬けにしておいたもの。
素朴だけど、うまーい!
食後にはココアを飲みました。マグカップを忘れちゃったので、山のうつわで飲みます。
右側の流木ポールが曲がっていてぐにゃぐにゃするけど、何とか問題なしの瀬戸際ハウス。
このタープ、ハトメがもうちょっと大きい方が良いんだけどな。
サイズ的には雨が降っても安心だし、張り方のアレンジも効きそうなのでしばらくこれを使っていることにはしますが。
今日は一日のんびり釣りを楽しみたいから、夜用の薪を作ってから出かけよう。
今日も昨日と同じテンカラ竿を手に、さぁ、釣り上りますか。
まだ谷に日が射してこないから、スギッパ巻きではなくグレーニンフを元に巻いた新しい毛ばり(写真1枚目下=後に銀鼠鉤と命名)を使ってみよう。
早春とか早朝とか渓魚の活性が低い時にできるだけ自然に流して使う毛ばりとして巻きました。
ようやく谷に日が射して来て、今日も暑い一日になりそうです。
なかなか前進できない浅瀬
その先の、昨日は出なかった渕尻の浅瀬からも出ました。
なんだか爆釣の予感。
川面に日が射して来ました。
岸際を歩いていると、足元からイワナが跳ねました。こんな浅瀬続きの流れにもイワナがたくさんいるようです。
狙うポイントごとにイワナが飛び出してくれます。これ、細かいポイントを全部叩いていたらなかなか前進できないかも。
浅いプール。上から下りてくる流れと、左からの細流がぶつかる辺りから出たイワナはまずまずのサイズ。銀鼠鉤好調です!
小落ち込み流心脇の巻き返しから出ましたが、掛かりが浅かったのか、ちょっと強引に寄せようとしたら、本日の初のバラシ。
本日も晴天なり。気温は急速に上昇中!
川面に日が当たり始めたので、毛ばりをスギッパ巻きに替えてみます。
落ち込みの肩、かなり強い流れの中からもイワナが食いつきました。
浅瀬で2尾連続でバラしたあと、
そしてやってきたイタチ淵(私が命名)。
手前に鏡面浅瀬が広がっているので、テンカラでは狙いにくいんですよね。こういうポイントはフライタックルでいきたい。
ユーフレックス インファンテ773-6 NSF+オービス バテンキル クリックII。ラインはDT-3F、6X9ftリーダーに7Xフロロティペット2ft継ぎ足し。
ピーコックパラシュート#14を結びます。
キャスティングを始める前に、手前の極浅い場所にイワナがいないかよーく確認します。
うっかり手前から走られると、このプール全体のイワナが警戒して釣れなくなっちゃうからね。
イワナは見えないけど、念のため手前からフライを浮かべつつ、少しずつ前進。
プールの真ん中辺りまで進むと出ました!
黒っぽい甲虫だと思って疑わずに飛び出したイワナ。これだけ暑ければ甲虫はいっぱい飛んでるね。実際イワナの胃袋の中にたくさん入っていたし。
だけど、甲虫ってどうしてそんなに川に流れてくるの? 木の枝からうっかり落ちるの? それとも寿命で力尽きて川に落ちるの? 不思議。
以前より浅くなってしまったイタチ淵。と言っても、透明度が高いから浅く見えるけど結構な水深はあるんですよ。
左もうずっと前、この淵に通い始めた頃の話だけど、左の大岩際の奥で毛ばりにかかった大物がぐいぐいと上流に向かって走り出し、1号のハリスをぶっち切られた苦い思い出があります。
今日は出ませんね。
大岩を回り込んで、イタチ淵の流れ込みの上。対岸の岩の脇、細い廊下状のポイントから出たイワナは良い引きしてます。イタチ淵に潜られ、流れに逆らって寄せてくるのに苦労しましたが、なんとかランディング。
元の居場所へと戻っていくイワナを見送り、お昼の準備を開始します。
今日はお昼も自然燃料でいきます。岸辺に落ちている細い枯れ枝さえあれば大丈夫。
シンプルなランチと極上の昼寝
直径2cmほどの枝を10cmくらいにカットしておいてから、ソロストーブに極細枝を入れて着火。
先ほど作った小薪にもすぐに火が移ります。ソロストーブはピコグリルに比べほんの少しの枯れ枝さえあれば、調理ができるところが素晴らしい。
アルミパーソナルクッカーでお湯を沸かし、スパゲティーを茹でます。
市販のソースで和えて、フリーズドライの卵スープにお湯を注げばできあがり。
本日の渓流昼メシ
・ガーリックトマトスパゲティー
・卵スープ
簡単なメニューでも渓流で食べるとほんとうに美味しい!
今日は、食材と調理器具&食器、釣り道具全てをフィッシングベストの背中に収納して持って来ています。いつもバックパックを背負って釣りをしていることが多いので、背中が軽くて楽ちん。
暑くなってきたなー。暑いよー、こんなに山奥にいるのに。
これだけ釣れれば炎天下を必死に釣り上る必要もないし、ちょっと日陰で昼寝でもしようか。
砂地の日陰に寝転びます。
ギラギラ太陽を木立が遮ってくれるのがありがたい。
気がつくと1時間以上眠ってしまったようで、時刻は14時近く。
気温はなんと29℃! 水温は18℃。暑い、暑すぎる。時折太陽が雲に隠れるのがせめてもの救いだけど。
毛虫のような毛ばり
マイマイガをイメージして巻いたこの毛虫毛ばりで、目の前の浅瀬を釣り上って行きます。
30分ほど釣り上りますが反応がなく、あれれ、お昼前とは違って反応なくなっちゃった。
毛ばりが悪いのか、それともこの区間にあまり魚がいないのか、それとも時間的な問題か。
と思っていたら、浅瀬流心脇でヒラリと反転するイワナが見えたので合わせます。
マイマイガも釣れないことはないみたい。
一度食い損なって再度定位するのが見えたので毛ばりを落とすと食ってきました。
にわかに西の空からモクモクと雲が湧いてきています。もしかして、また局地的豪雨くる?
小落ち込みから白泡脇沈み石の手前から出ました。が、流心を越えて寄せてきてランディング寸前にバラしてしまいました。そこそこ良型だったのに残念。
瀬尻から次の落ち込みへ向かう辺りでも出ましたが、またしてもバラし。
もしかして、この毛ばり針掛かりが悪い?
この毛ばり、かなり重く作ってあるんだけど、それが問題?
そもそ、本物の毛虫の場合、表層近くを流れるような気がするし、これは改良の必要ありだな。
スギッパ巻きに戻します。
夏の暑い日にはやっぱりスギッパ巻き!
複雑に流れが絡み合う深さのある壺からも良型をキャッチ。
が、写真撮影前に飛び跳ねて逃げられました。まぁいいです、今日は釣れた魚全部撮るのは途中からやめたことだし。
まだ16時ですが、太陽はもう山の陰に隠れて川面にも日射しが届かなくなってきました。
瀬尻の小さな廊下でフッキングした魚影は小さく見えましたが、妙に力強く泳ぎます。
あれ?もしかしてスレ掛かり??
下の段に落として寄せてくると、思ったより大きいじゃん!
ちょうど尺くらいのヤマトイワナ。文句なく美しい。
この1尾が釣れれば、ここまで来た甲斐がありました。ありがとうございます!
さっきのイワナに食いつかれて破損してしまったスギッパ巻き。
新しいものに取り替えて、もう少しだけ釣りますか。
瀬尻の沈み石裏。良型が釣れましたが、これも撮影前に逃げられちゃいました。いいんですよ、もう写真はどうでも良くなってますから(笑)
その奥も狙ってみます。大岩の際です。
黄色丸印に毛ばりを打ち込むと、上(写真左側)からイワナが毛ばり目がけて突進するのが見えました!
毛ばりを食ったであろうタイミングで、ラインを張る程度に合わせると、フッキングはしたけど下流に猛ダッシュするイワナ(黄色矢印)。
あれ、途中でテンション抜けちゃった。バレた!?
慌てて自分が下に下り、竿を後ろに倒してみます。
良かった、魚の手応えがまだある。
そのまま一気に岸に寄せようとしたけど、今度は上流に向けて猛ダッシュするイワナ。
あれ? これ大きいんじゃない!?
竿の弾力でいなしてもなかなか寄らず、よし、このまま砂地にズリ上げよう(黄色楕円地点へ)。
岸際で暴れてヒヤヒヤ、近寄って何とかネットイン!! ふぅー、危なかったぁ。
野性の美しさにしばし見とれ、これで気持ち良く納竿できます。ありがとうございます!
この時間帯、ここから先もきっと良いイワナは釣れるでしょう。
でも、もう十分です。
にわか雨の後のパエリアと完璧な塩焼き
林道に登り、テント村まで戻ります。イワナの魚影が濃いおかげで今日は極短い区間を釣り上っただけ。昼寝し過ぎたせいでもあるんだけどね。
少し下るとすぐにタープが見えてきます(写真2枚目黄色矢印)。
テント村に早めに戻ってきて良かった。なんか急に雨雲が頭上に張り出し、雨がポツポツと落ちてきた。
荷物を全部タープの下に待避。今までのブルーシートよりも大きいと雨の時も余裕があるね。
東の空はあんなに晴れているのに、今日も局地的なにわか雨か。
タープの下に座り込んでしばらく雨宿りするしかないな。このタープのおかげで、前よりはだいぶ雨は凌げるようになったな。そうは言っても周囲は開放状態だから集めた薪に雨がかかっちゃうんだけど、すぐに止むと思うから表面が濡れる程度なら問題ない。
雨が激しくなってきました。
膝を抱えて座り込んでいるのも疲れてきたから、この際、寝転んで待とう。
ちょっとビビるくらいの土砂降り。このまま降り続くってことはないよね、まさか。
心配をよそに15分ほどでパタリと雨は止み、青空が覗いてきました。
さて、晩ご飯の準備に取りかかろう。今朝テント村に近いところで釣れたイワナをキープしておいたので、塩焼きの準備ともう一尾は2枚におろします。
ピコグリルで焚き火。
おろしたイワナに香草焼きシーズニングを少し振りかけて、山フライパンで両面をこんがり焼きます。上流方向から風が吹き下ろしていて、火が流れますね。
イワナが焼けたら一旦取り出します。
少し透明になるくらいまで、生米を炒めます。
先日スーパーで、味噌汁の具用にゴボウ、ニンジン、大根を乾燥したものを見つけたで持って来ました。これを入れます。乾燥長ネギも追加。
そしてイワナも乗せて、水とパエリア用のシーズニングを入れて炊きます。
もうなんかこの時点で凄く美味そうなんですけど。
フライパンのフタを忘れちゃったので、アルミホイルでフタをします。
火力強めにして、遠火で塩焼きも進行しつつチタンパーソナルクッカーでスープ用にお湯も沸かします。
本日の渓流晩メシ
・イワナのパエリア
・イワナの塩焼き
・キノコの豆乳スープ(フリーズドライ)
パエリアは最初の水分量が少し少なかったようで、途中水を注ぎ足して炊き上げました。
まぁここでイワナが釣れないってことはないだろうけど、もしイワナが釣れなかったらタンパク質無しのパエリアになるところだった(笑) それに塩焼きもなくなって、かなり質素な食事になるところだった。このところ質素指向なので、それはそれで良いんだけど、源流に釣りに来てイワナを食べられるのは本当に幸せでありがたいことです。
イワナは遠火でじっくりと焼き、意図的に煙を当てて燻します。
ほぼ最高の塩焼きが完成しました!
やっぱり日本酒ちょっと持ってくれば良かったなぁ。
塩焼きを食べ終わって少しだけ焚き火を眺めながら、まだ右手に残るあのイワナの引きを思い出します。今日もいい釣りできたなー。
なんだかあっという間に夜になっちゃったけど、時刻はまだ20時。
普段ならまだ宵の口だけど、寝袋に潜り込んじゃおう。潜り込むというかちょっと暑いくらいなので、ファスナーは開けたまま。
横になると、日中はすっかり息を潜めた問題の『咳』がまた出始めるけど、昨晩よりは幾分マシになったかな。と自分に言い聞かせているうちに、夢の世界へと引きずり込まれていました。
ギラギラ照りつける太陽の下、額から滴り落ちる汗を拭いながら一歩また一歩前進。
ヘトヘトになって林道脇の木陰に倒れ込むように寝転んで休憩。
あー木陰は涼しい、生き返る〜。あれ?木陰にいるのに日射しが眩しい。なんでこんなに照りつけてるの??
はっ!? とそこで目が覚めました。
夜の森から月が顔を出していました。
時刻は23時。なんだ夢だったのかぁ。
あれ? きのう尺イワナが釣れたのは夢じゃないよね?
しばらく頭を巡らせて、今は二日目の夜で、昼間尺イワナが釣れたのは現実だと思い出したので安心して再度深い眠りに落ちました。
・・・三日目につづく。
コメント
朝食はお湯を沸かすだけと言いつつ、前日におにぎりを握ったり、ミズを麺つゆ漬けに仕立てておいたりと芸が細かい。
ココアは、器の形状からお汁粉にしか見えないけど。^^
瀬戸際ハウスは、青じゃなくなっただけでグレードアップ感が半端ないですね。
ランチもパスタだけで終わらず、スープを添えるあたりがリコプテラさんらしい。
そして何という爆釣!
冗談でなく、今年絶不調だったボクの年間イワナ捕獲数を1日で遥かに上回ってる・・・
リコプテラさん、「運」で釣ってるなんて書いてることもあったけど、確実に実力じゃないですか。
今度はボクが、リコプテラさん認定します。(笑)
>フライパンのフタを忘れちゃったので、アルミホイルでフタをします
って、フタ忘れる人が普通にアルミホイル持っているのが、そもそもおかしい。
そんな人だから、こんな旨そうな晩飯を作っちゃうんだろうけどね。
これでまだ3日目にネタが残ってるんだから、なんて良い釣行。
年内に続編アップされることを祈りつつ、年内いっぱい仕事に励みます。
こんにちは。
まだこんなすばらしい渓流が残っているんですね、腕前も流石ですが行って見たい川ですね、渓相もテンカラ向きで藪沢とは違った魚との駆け引きを楽しめそうです、奈良井川上流の白川に行った若い頃を思い出しました、車止めからしばらく歩いての釣行でしたが仲間と二人でしたがそれでも不安でしたね、単独でしかも野宿とはその度胸に驚きます。
おはようございます
実にワイルドな釣行記で羨ましいです。
流れの割に立派な河原で、山岳渓流の厳しい営みを感じられる景色ですね。
釣れるイワナ達も、引き締まったワイルド感がある、エエ魚体と顔付です。
そんな中、えっと思う写真(Image 65 of 104)が。
見た感じが、玄武岩の柱状節理の様な石柱が並んでいて。
南アルプスと言うと、赤石の赤チャートや、光岳の石灰岩が印象的で、何となく玄武岩とは別世界の感じを抱いていました。
そんな自然と綺麗な渓魚達と戯れられた3日間、エエですね。