昨年も冬になるとざざ虫漁をやっていることを書きましたが、今年もシーズンがやってきました。
今回初めて読む方にお伝えしておきますが、ざざ虫とは天竜川上流部のヒゲナガカワトビケラを中心とした水生昆虫の総称です。
そして私の地元、上伊那地方ではそれを佃煮にして食べるんですよね。あぁ、恐ろしい(笑)ざざ虫の佃煮の作り方はこちら。虫嫌いな人は、見ない方が良いと思いますよ。
2016年冬、ザザムシ漁開幕。
12月〜2月までがザザ虫漁のシーズンです。
魚じゃないのに、なぜか漁協が仕切っていて漁をするためのシーズン券を購入しなければいけません。その前に漁協の組合員でなければザザ虫漁はできません。私はザザ虫漁をするために天竜川漁協の組合員になっています。
ザザ虫漁には許可が必要といっても、それはこういう大がかりな道具を使う場合であって、釣り用の餌を採る時みたいに石をひっくりかえしてチマチマと採る分には誰が捕っても自由ですよ。そんなに量は捕れませんが、少し佃煮にするくらいなら十分でしょう。
ザザ虫を捕るための四つ手網。昨年は先輩漁師からもらった木のフレームを使ってましたが、今年は塩ビ管を使って作り直しました。それから、川底を掘り起こすための万能鍬。
ブーツタイプのウェーダーを履いて、専用のカンジキを装着。これは鉄工所に頼んで作ってもらったものです。これも昨年から少し改良を加えました。
網を下流側に置いて、万能鍬で川底を掘り起こしさらにカンジキでガサガサやると、ザザ虫が網に入るという寸法です。
網に入ったザザ虫はゴミ(主に枯葉や小枝など。人工的なゴミではありません)なんかもたくさん入るので、選別器に乗せてある程度自動選別します。
先輩漁師たちは、特注のブリキ製タライを使っていて、昨年私も樹脂製のタライを加工して使っていました。これを今年はホームセンターの四角いボックスで作り直しました。
虫の選別器はどういう仕組みなのか。
目の粗い網を一番上に、少し間隔をあけてその下に中くらいの目の網を、そしてまた間隔を開けて一番下に、ザザ虫がギリギリ通れるくらいの目の網を配置するんです。
ある程度虫を捕ったら、その網にゴミと一緒にザザ虫を乗せておくと、虫が自ら網の目をかいくぐって下へ下へと降りて行ってくれるんです。
ボックスの一番下にはほとんどゴミが除かれて虫だけが入ります。これを繰り返します。
ボックスの底に溜まった虫。反射して見にくいですね(^_^;)
このボックスは水通しを良くして虫の活き保つ工夫なんかもしてあります。
その辺りは私独自のノウハウなので秘密にしておこう(笑)
ともかく、この選別器がことのほかうまくできたので、昨年に比べてとても効率が良いです。
ザザ虫と呼ばれる虫たち。
上記の通り、いくつかの虫をまとめてザザ虫と呼んでいます。
メンバー紹介をします。
ザザ虫のメイン、ヒゲナガカワトビケラ。餌釣りをやっている人ならクロカワムシと言った方がわかりやすいですね。フライフィッシングをやっている人ならカディスということになります。ザザ虫の90%以上はこの虫です。
カワゲラも捕れます。餌釣りではオニチョロやキンパク、フライフィッシングではストーンフライ。
ヘビトンボ。地方名マゴタロウ。
えー!?これを食べるの?って感じですよね。
手で掴むと噛みついてくるので、苦手。
これは佃煮にしてもかなりインパクトあります。ただ、純粋に味だけならザザ虫の中では一番うまいです。
以上の三種が一般的にはザザ虫と呼ばれて食べられる虫です。
「一般的には」って言ったって、私の地元限定の話ですよ。こんなの食べるのが世間の一般であるはずがない(笑)
それに、ザザ虫は現在では『高級珍味』という扱いでお土産物なんかになってます。一般家庭で普段から食べてるわけじゃないですよ、念のため。
その他の虫と、生き物たち。
カゲロウの仲間たち。フライフィッシングではメイフライと呼ばれ、ドライフライの中心的存在。
写真1枚目はフタオカゲロウかな。餌釣りではピンチョロ。
★2018.2.27追記:
こちらはよく調べたらフタオカゲロウではなく、チラカゲロウでした。背中に縦に一本線が入っているのが特徴。
写真2枚目はヒラタカゲロウかな。餌釣りではカメチョロ。
カゲロウの仲間は種類が多いので、厳密にはもっと細分化した名前があるのかも。この二種類も食べても良いと思う、個人的には。
ヒラタドロムシ。三葉虫を小さくしたような平たくて円い虫。
これが厄介なんですよ。網の目を通りそうもない体型なんだけど、体を変形させられるので網をかいくぐり吸盤のようにザザ虫にくっついたりボックスに張り付いたり。
後は、トンボのヤゴも結構います。
ヤゴにもいろんな種類があります。
このヤゴは捕まえると、お尻から水鉄砲のように結構な勢いで水を噴射します。
外敵に対する攻撃でもあるし、水中で推進力に使ってスィーっと移動したりもします。
この二種類は、ザザムシと一緒になっていても鳥も食べないのできっとうまくないんだろうと想像。
たまにドジョウなんかも入ります。ヨシノボリもいますね。支流の流れ込み付近でカジカが入ったこともあります。
それから、虫のお裾分けをもらいにくるハクセキレイ。セグロセキレイもやってきますが、ハクセキレイの方が人懐っこいですね。極まれにキセキレイもやってきます。
こちらは、浅瀬で死んでいたブラックバス(ラージマウス)。
天竜川上流部はスモールマウスバスの方が勢力が強くて、かなり繁殖しちゃってます。
2016冬のザザ虫は不漁です。
どーん。捕れたザザ虫。
この日はまあまあ捕れましたが、今年は全体的にはザザ虫は不漁です。
今年は秋のキノコの出方もおかしかったし、諏訪湖のワカサギは全滅するし、きっとザザ虫も不漁なのでは?という予感が当たりました(T_T)
クロカワムシの量が少ないです。代わりにカワゲラが多い気がします。気がするっていうより昨年に比べると明らかに多いです。カゲロウ類も多いですね。
でも、そもそものパーセンテージが低いので、カワゲラが増えたからといって全体の収量は増えませんが。
昨年と同じ量だけ捕ろうと思うとかなりの労力が必要になるけど、虫日和には早起きして釣具かキャンプ用品を買えるくらいまでがんばろう(^_^)
諏訪湖のワカサギ全滅とザザ虫の不漁は因果関係あり?
カワゲラはかなり水質の良い場所にしかいません。
天竜川本流ではそんなに捕れませんでした、今までは。支流には結構います。
片やトビケラは若干水質の悪い(富栄養化した)場所の方がたくさんいます。
天竜川上流部が日本の他のどの川よりもクロカワムシが多いのはそのせいです。諏訪湖の水が流れ出しとなっているからです。
クロカワムシが減って、カワゲラやカゲロウが増えた・・・
これはもしからしたら、天竜川の水質が良くなったのでは?
確かに川に入ってみると水はかなりきれいです。ただ、これが昨年の今ごろと比較してどうかというと、視認では判断不できません。
今年の夏に、諏訪湖のワカサギが全滅状態になった話を以前に書きました。
菱(ヒシ)という植物が大繁殖して湖底が酸素不足になったのが原因とのことでした。
昔から生息している菱がそんなことを巻き起こすことがあるのだろうか、とちょっと疑問に思っていましたが、もしかしたら、それはなんらかの自浄作用だったのではないでしょうか。
菱が悪者になっているけど、実はアニメ映画『風の谷のナウシカ』(宮崎駿監督)に出てくる腐海の植物たちのように働いたんじゃないかと。
まぁ、私の妄想ですよ。
今ではワカサギは諏訪湖の冬の風物詩のようになってるけど、昔から諏訪湖にいた魚じゃありません。確か霞ヶ浦辺りからもってきたはず。別にワカサギが諏訪湖に住んでいることが悪いってことじゃないけど、元々の自然のサイクルには適合しきれなかったのかもしれません。
ざざ虫をどうやって食べるのか?
昨今世界的には昆虫食ブームらしいですが、地元の伊那谷では昔からこれらざざ虫を佃煮にして食べていました。と言っても年配の人でも実際に食べたことがあるのは少数派だと思われます。
同じ昆虫食でも蜂の子やイナゴの方が一般的で、こちらは地元のお爺さんお婆さんならほとんどの人は食べたことがあるでしょう。
ざざ虫の佃煮は高級お土産品として地元では瓶詰めにして売られているし、通販でも購入可能です。
天竜川ほどたくさんざざ虫(特にヒゲナガカワトビケラ)がたくさん捕れる川は全国にも他にはないと思いますが、1回佃煮にするくらいの量ならがんばればどこの川でも捕れるでしょう。
ざざ虫の佃煮をぜひ食べてみたいという人は、自分で作ってみるのもお勧めです。
ざざ虫の佃煮の作り方はこちらの記事で紹介していますので、挑戦してみて下さい。
コメント
風の谷のナウシカは原作も読みたいところですね。
それにしてもこの虫の味が想像できませぬ(笑)
美味いなら僕は見た目とか全然大丈夫です。
Nori1022さん、こんばんは。
ナウシカの原作も読んでますが、映画は原作全7巻のうち2巻までしか出ていない段階で製作されたので、原作の方はそれ以降さらに壮大な物語になっています。
各キャラクターの立ち位置も少し違ったり、巨神兵も描かれ方が少し違います。宮崎駿さんは漫画家ではないので、ペン入れなしの鉛筆画というというところが少々読みにくいですが(笑)
ざざ虫は小エビの佃煮みたいな味ですが、見た目が大丈夫ならヘビトンボが芳ばしさがあって一番うまいです。焼酎や日本酒のアテには最高です。
さすが『虫捕り』の道具もコダワリの自作というあたり、リコプテラさんらしい。(笑)
この虫が天竜川の、デカイ渓魚たちを育てるんですね。^^
kuniさん、こんばんは。
虫捕りも、やってみると釣り同様、道具が大事なんですよね。
昨年は先輩漁師さんに教えてもらったままの道具でやってましたが、今年はいろいろ改良を加えてパワーアップしました。が、肝心の虫が少ないです(笑)
確かに太ったクロカワムシのおかげか、春から梅雨にかけて『天竜差し』と呼ばれるサツキマスと言っても良い大型のアマゴが本流で釣れます。
ただし、これがやはり『0か1』の釣りなので、忍耐力のない私は今のところ挑戦していません(^_^;)
こんばんは。
何気に、ザザ虫漁に使うアイテムは全てアップグレードされてますね(笑)
しかし少ないのですか?それで…
思わず呻き声がでましたよ。
いや、私も平気な方ですが、孫太郎はちょっとキツイかな〜^^;
こちらのローカル局の番組で以前に孫太郎を食べてましたが、たしか素揚げにしてたような?苦くて不味いと言ってました(笑)
七流釣師さん、こんばんは。
そうなんです。今年の道具は時間をかけて改良したので、最強です(^_^)
少ないんですよ、虫が。昨年と同じ量だけ捕ろうと思うと、ほぼ倍の労力を要します。
呻き声が出るのは正常です。マゴタロウは、もう地球外生物としか思えません(笑)
素揚げはいけませんね。これ、佃煮にするとクロカワムシよりうまいんですよ。
ただし、口に入れられる人は少ないでしょう(^_^;)
上伊那地方はざざ虫を食べる文化が有りましたね、一般者には親しみが有りませんが
佃煮にして売ってます、私も買った事が有ります、美味しいですね。
参考に成りました、毎年餌として「キンパク」を取りにいきますがタモの変形品で
効率が悪く「三つ手網」を今年は作ろうと思いSUS網を探してますが気に行った物が無く
作れず試案してます、四つ手網の様な材料でも良いですね。
釣りお爺さん、こんばんは。
ウチの辺りは日本でも有数の昆虫食エリアだと思いますが、セミを食べる地域もあるらしいので、それには敵わないかも(笑)
ざざ虫は珍味というのがピッタリですが、焼酎や日本酒には合いますね。
キンパクは天竜川本流で捕れるものはサイズが小さめです。支流の方が大きいのがいますね。
私の四つ手網は、金物屋で3mm目のSUS網を買ってきて自作しました。虫を捕るにはこのくらいの網目が良さそうです。
ざざ虫ってクロカワ虫だけだと思ってましたが、カゲロウとかカワゲラとかもざざ虫なんですね〜。勉強になりました。
個人的にはざざ虫より蜂の子のほうが好きですね。
akiさん、こんばんは。
一番多く捕れるのがクロカワムシなので『ざざ虫=クロカワムシ』だと思っている人が多いと思います。
ずっと昔は、クロカワムシよりカワゲラの方が主体だったと図書館の郷土誌に書いてありました。時代とともに、ざざ虫も変遷してきているのかもしれません。
単純に味だけなら、私も蜂の子やイナゴの方がうまいと思いますね(^_^)
ざざ虫は、“ここにしかない”という希少性があるんでしょうね。
おはようございます。
川虫は釣ではお世話になって、ヘビトンボもイワナの良い餌くらいに親しみを持っていましたが、籠にドッサリ入っているのを見ると、結構なインパクトですね。
背筋がゾクゾクします。
菱が「腐海の植物役割説」は面白いです、有りえますね。
自然がもつ「揺り戻し現象」は実に不思議で、大きな力です。
でも、東海地震は勘弁してほしい。
いつか来るのは避けられないでしょうから、覚悟と準備は必要ですね。
マンボウさん、こんばんは。
クロカワムシやカワゲラは釣り餌としては最高ですね。
ヘビトンボは私も苦手です。掴むと噛みついてくるし、見た目が怖い(笑)
菱が大繁殖して酸欠でワカサギが死んだ、そこまではわかったようですが、その先に何か理由があるような気がするんですよね。
今の科学では地震予知は難しいようですね。こちらも近くに中央構造線が走っているので、地震の確率は高いと言われています。おっしゃる通り、備えはしておいた方が良さそうです(^_^)
ついについにリコブテラさんが渓魚になる季節ですね。
クロカワなどはほんの数年前まで素手で触れませんでしたから自分は渓魚になれません。
(笑)
我輩は釣る方に専念します。(^^)/
幻の渓流師さん、こんばんは。
そうですね、魚の気持ちになって虫を探し求める季節がやってきました。
先日も、京都から引っ越してきたという人が散歩中に「何を捕っているの?」と見に来たんですが、クロカワムシを見て気絶しそうになってました(笑)
釣る方に専念した方が良いのは間違いないです。
年が明けると、いよいよ渓流解禁も近づいてきますねー。
私はこれだけクロカワムシを見ているのでクロカワムシに似せた毛鉤を巻いてみます(^_^)
こんばんは。
信州でも天竜川だけの文化ですよね、驚きましたクロカワ虫だけだと思っていました、これなら奈良井川でもやってみればいるかもしれませんね、たしかに諏訪湖の水の汚い頃は天竜川は下流に行くほどきれいになると言われていましたね、岡谷から箕輪のアユは大きいですが不味かった記憶が在ります。
今は珍味で有名ですが最初に食した人はすごいですね、ざるの中のザザムシ、これはちょっと!、イナゴやスガレよりインパクトがありますね。
ハックルさん、こんばんは。
そうですねー、ざざ虫は上伊那だけですね。県内でも食べたことのない人の方が多いでしょう。
奈良井川では結構捕れそうな気がするんですよね。天竜川のような規制はないでしょうから、今度やってみようかな(^_^)
昔は本当に諏訪湖の水質が悪かった時期がありましたね。今は天竜川上流部もだいぶきれいになったように思いますが、夏場はダメですね。
ざざ虫、特にマゴタロウ(ヘビトンボ)のインパクトはあり過ぎです!
最初に食べた人は偉人なのか変人なのか(笑)
最近、大阪から長野の引っ越してきた者です。イナゴへの恐怖は去り、モグモグいけるようになったので、そろそろ次のステップと思い、ざざ虫か蜂の子かと考えていた時に当ブログを発見!ざざ虫高いから、漁のやり方一子相伝してほしいです。
支那の大阪人さん、初めまして。
ようこそ信州へ(^_^)
イナゴからステップアップしちゃうんですね(笑)
ざざ虫は本文にも書いた通り、大量に捕る場合は漁協の組合員になる必要がありますが、家庭で佃煮にする程度なら瀬で大きめの石をひっくり返して、割り箸かピンセットでつまんで捕れますよ。ちょっと地味な作業になりますが
漁協の組合員になったり、お金を払う必要はないです。
冬になったら(冬じゃないとざざ虫はうまくないです)、試しにやってみて下さい。
ざざ虫は買うとほんとに高いですよねー。