2025年の天竜川水系、木曽川水系ともすでに渓流解禁を迎えだいぶ日射しも濃くなってきていますが、話は昨年(2024年)の9月に遡ります。
9月上旬、逆さ毛ばりのテストを兼ねて釣りに出かけてみることにしました。
しかし、その日はあいにくの『曇り時々雨』予報。私は常に気分重視の釣りをしているので、基本的に雨の日は釣りに行きませんが、今回はこの日を逃すともしかしたら禁漁まで釣りに行けないかも、という状況だったのでちょっと無理をして出かけてみました。
逆さ毛ばりのテスト、のつもりが|木曽川水系 檜の森
今日はジャングルモックで林道を歩きます。
雨が落ちてきそうな空の下、林道をてくてく歩きます。
雨が落ちてきそうな空を見上げながら少し足早に進みます。
途中にはワレモコウ。枝分かれした先端に暗紅紫色の実のように見えるのが、花なんですよね。
これも林道脇でよく見かけるんですが、あの山菜のツリガネニンジン(トトキ)なんですよね。
うちの辺りでは『ミツバ』と紛らわしい名前で呼ばれてます。
花を見ると、ツリガネニンジンの名の通り、釣り鐘のような花を咲かせていますね。
雨が降ったり日が射してきたり目まぐるしい空の下
途中覗き込んだ流れは、かなり増水しています。
しかも霧雨が舞ってきました。
この辺りもまだまだ水量多いですね。
でも、元々今日の予定はもっと上。
想定内ですが、霧雨は徐々に大粒の雨になってきました。
仕方ない、大木の下で雨宿りしつつ、上だけ雨具を着よう。
しばらく雨宿りをしていると小降りになってきたので、再び林道を上ります。
すると、今度は日が射して来ました。なんだか不安定な天気です。
もう天気がどうなろうと前進するのみ。
くねくねといくつものカーブを歩き抜けた頃には青空が広がってきました。
蒸し暑くなってきて雨具なんて着てられないじゃん。
そして今日の入渓予定場所に到着。林道から川まではぬかるみのある笹藪をかき分けて進まなくては。サワークライマーに履き替えて下っていきます。
この先には緩やかな平瀬が続くポイントがあるはず。そこなら逆さ毛ばりのテストにちょうど良いと思って。
それにしても、笹がだいぶ伸びてるな。この藪の中にツキノワグマが潜んでいたらかなりヤバいよ。
シシ神でも出てきそうな川霧に包まれバラシ連発
なんとか川に到着。先ほどの雨で空気が冷えたせいか、日が射して来た先の方に川霧が見えますね。
先に進むと川霧はさらに濃くなり、シシ神でも現れそうな神秘的な雰囲気。
何か起こるかな?
竿はNISSIN ZEROSUM テンカラ 7 : 3 3207、SUNLINEぶっとびテンカラ レベルライン3号(楽天で見る・アマゾンで見る・ヤフーで見る)を3.3m+FUJINO フロロテンカラハリス0.8号(楽天で見る・アマゾンで見る・ヤフーで見る)を1mほど。仕掛け全長は4.3m。
今回は逆さ毛ばりのテストに来ているので、雉銅(きじあかがね)を結びます。真横に対岸に打ち込んで手前の岸まで扇形に引いてくる釣り方(扇引き)を試してみますが、これはもっと開けた里川で春から初夏の頃にやるべき釣り方かも…
アタリのないまま、遡っていると水中に魚が沈んでいるのを発見。
手に取ってみると小さいイワナでした。なんらかの理由で死んでしまったみたい。
傾斜が緩く平瀬がたくさんあるので、この辺りは扇引きに適していると思ったんだけど魚が出ません。扇引きにこだわらなくてもいいんだけど、逆さ毛ばりは自然に流すよりも少し誘いを掛ける釣りに適しているように思うし、そのような使い方をしたいんですよね。
側流の浅瀬、扇引きや誘い釣りではなく普通に下流側から打ち込んで自然に流す釣り方で、一尾目が出ましたが、バラシ。
瀬の中の大石裏のタルミ。
グインとラインが引かれ、ブルッと来ましたが、またバレてしまいました。チビイワナだったかな?
プールからの流れ出し。
水面直下を流れる毛ばりに激しくジャンプして出るも、立ち位置が悪くラインが弛んでいてアワセが利かず。これは良型アマゴだったかもしれません。
やっと釣れたイワナの体表にくっついていた謎の生物
流心向こう側の廊下、ここは少し誘いを掛けて流すと、やっと来ました!
でも、小さいな。
小さいカブトガニというか、ざざ虫漁でよく見かけるヒラタドロムシのようなもの。
これ、後で調べてみたら、鯉やフナなどの淡水魚類の体表に付く寄生虫でウオジラミと呼ばれるものらしい。口に針のようなものがあり、魚の血液を吸って生活していて、自分で自由に泳ぐこともできるので宿主を移動することもあるとか。
もしかしたら鯉釣りなんかをしている人は馴染みがあるのかもしれませんが、私は初めて見ました。
その後、岸際のタルミからも出ましたが、またしてもバラシ。
たまたまバラシが多いだけなのか、それとも毛ばりに問題があるのか、ともかくこの逆さ毛ばりには改良を加えようと思います。
そうこうしているうちにざーっと雨が降ってきたので、再び雨具を着込み、退渓することにします。
入れ以上雨の中で竿を振っても毛ばりのテストにはならないし。
運悪くちょうどこの辺りも笹藪だらけの場所。背丈ほどの笹をかき分けて、なんとか林道に出ました。ちゃんと釣り上げられたのは1尾だけだったけど、毛ばり改良の方向性は見えたし、ウオジラミという不思議な生物に出会えたので悪くはない。
雨に打たれながらの帰り道、ウオジラミのことばかり考えていました。
チョウとヒラタドロムシ
寄生虫というとアニサキスやエキノコックスみたいな感じのものを想像するけど、ウオジラミは甲殻類だというからそれにもビックリ。調べて見ると他の生物に寄生する甲殻類は他にも存在していて、有名なところでは鯛の口の中に寄生することで有名なタイノエ(ウオノエ)なんかもいますが、珍しい存在であることは確か。
ヒラタドロムシを引き合いに出したけど、あれはまさか甲殻類ではないよね?
と調べてみたら、カゲロウやカワゲラと同様に幼虫時は水棲の昆虫だった。だけど…
ヒラタドロムシの成虫がこんな姿だとは知らなかった↓
《写真は豊田市矢作川研究所より》
写真左は私がよく目にするヒラタドロムシの幼虫。ざざ虫を捕っていると網に入ります。
そして写真右がその成虫。まさかこんな黒いコガネムシのようなものになるとは、ビックリ。
ヒラタドロムシは日本に10種類以上いるみたいで、成虫も半水棲と陸棲のものがいるらしい。
ともかく、こんな甲虫になるとはねぇ。生き物の世界は不思議なことだらけ。
あ、脱線しちゃいましたが、ウオジラミの話に戻ります。
ウオジラミというのは別名であって、正式名称(標準和名)はなんと『チョウ』なんですよ。
チョウ??
チョウという生き物知ってるでしょ?
と聞けば、ほぼ全ての日本人が蝶々を思い浮かべるんじゃないでしょうか。
チョウ(蝶々)というのは、Wikipediaによると
とのことで、当然個別の種名ではないんですよね。
一方、寄生虫(虫ではないんだけど)のチョウの方はウオヤドリエビ綱チョウ目に属するチョウという種名の生物。どうしてこんな紛らわしい名前を付けたんだろう?
全く別の種類なのに同じ名前(同名異種)の生き物たち
今回は総称と種名という違いはあるけど、生物学(分類学)の世界で、全くの別の生物に同じ名前を付けるなんてことあるのかな? それはないよね、さすがに?
そんなことを考えて頭を巡らせると、柿と牡蠣は全く別の生物なのに同じ名前じゃない?
と、調べて見ると柿の方は正式な種名はカキノキだった。さらに、牡蠣の方は総称で正式にはマガキ、イワガキなどいくつも種類があるとのこと。知らなかったー。ということで、種名は被ってないのでセーフ(笑)
別種でありながら同じ名前のものが存在しているのか検索してみると、それを『homonym(ホモニム):同名異種』というらしい。
そして、環境省が主体となったいきものログというサイトに同名異種の生物がまとめられていました。こちらのファイルを参照していただくとわかりますが、驚くことに同名異種はかなりたくさんあるんです!
例えば私が馴染みのある生物でいうと、
魚類のアカザ、この同名異種は畑なんかによく生える雑草のアカザ。確かに、言われてみればこれはどちらもよく知っていて同じ名前だ。
他には、キノコのアカヤマドリ、この同名異種が鳥類に存在している。山でたまに行き会うヤマドリは知っていますが、アカヤマドリという種が九州にいるらしい。
さらには、昆虫のカマキリ、この同名異種が魚類にもいます。魚類のカマキリは実物は見たことがないけれど、存在は知っていました。
他にも、魚類のサワラと樹木のサワラ。蝶のヤマトシジミと貝類のヤマトシジミ、などなど。
魚のハリセンボンと同じ名前の植物もあるらしく、それは知りませんでした。
上記はほんの一例で、2022年のデータで実に85件もの同名異種(目名や科名が同じものも含む)が掲載されています。
ビックリしますね!
生き物に名前を付けるのは楽しいけれど
どうしてそんな紛らわしい名前を付けるの? と思いますが、昔はちゃんとしたデータベースがなく、まさか他のジャンルで同じ名前があるとはわからずに命名しちゃったんですかね。
これから先に発見される生物に命名する時は、他に同じ名前の生物がいないかしっかり検索するとは思いますが。
今まで話してきた生物の名前とは『標準和名』(日本語での呼び名)のことで、学術的には国際的なルールに則った『学名』というのがあって、学問の世界ではさすがに同じ名前のものは存在しないので(存在しないよね?)、あまり問題視されていないんでしょう。
大脱線してしまいましたが、不思議なチョウという生物に出会えたことで、少し勉強になりました。
昔から生物の分類や名前には興味があって、「これは本当に良い名前を付けたなぁ」と思うこともあれば「こんな名前を付けた人はアホじゃないの」と思うこともあったり(笑)
生き物に名前を付けるというのは楽しい作業だけど、人間の赤ちゃんも含め名前を付けられた側のこともちゃんと考える責任がある、と思わせられる出来事でした。
コメント
こんにちはです。
去年の話なのですね。
私の通う川も夏になるとチョウ(またはチョウモドキ)見ます。
上に管理釣り場があるからでしょうか。
フォーセップで取って潰してやります。
ヒラタドロムシ成虫知れてよかったです。あんな甲虫になるのですね。
昔自宅の図鑑で見たけど何故かはっきりしない画像で謎でした。
ありがとうございます。
いろんな発見がありますね。